さくらコース(1~2歳児)・プレ年少コース(2~3歳児)の授業には、「知的体験(実体験→プリント)」「母子活動」「個別」「自立行動」という特長的な活動があります。
今回は、発達心理学博士であり鎌倉女子大学准教授の細野美幸先生より「個別」に関連した学術的解説をいただきました。
子どもは生まれながらにして性格傾向を持っていると言われています。これは専門的には「気質」と呼ばれるものです。例えば、幼い頃から人の表情や雰囲気に敏感で、あいさつが得意、ごっこ遊びなどを好むタイプの子どももいますし、その一方で、どちらかというと物の仕組みなどに興味を持ち、物の名前を早く覚え、ブロックや積み木などで遊ぶ方が好きというタイプの子どももいます。様々なタイプの気質と、子どもを取り巻く環境とが影響し合い、その後の性格が形作られていくのだと思われます。ですので、性格や興味・関心は、それぞれの子どもによって多種多様なものとなってきます。
子どもの言語獲得について調べた研究から、テレビ番組などを使うのではなく、大人が直接子どもと会い、興味・関心に沿った関わりをする場合が最も学習効果が高いということが分かっています。つまり、個々の子どもの性格や興味・関心に合わせて、個別に大人がやり取りする時間は、子どもの学びにおいて大変重要であると言えます。
子どもは 0 歳代から急激に言語能力を発達させていきますが、0 歳から 2 歳までの頃は、まだ親子の間で成り立つ独特なコミュニケーションパターンでやり取りをしていると言われます。つまり、お父さんお母さんに対しては、子どもは自分の意思や気持ちを自分なりに伝え、理解してもらうことができますが、家庭外において他の大人に対しても同様にできるかというと、まだそうではないのです。この時期に、お母さんがそばにいるという安心感の元、他の大人(例えば先生)とやり取りをするという体験は、他の大人にも通じる言葉で自分の意思や気持ちを伝えていこうとする意欲につながり、言語能力の発達を促すものと思われます。
家庭とは異なる状況で、先生が一対一で、それぞれの子どもの興味関心に合わせた丁寧なやり取りをされる中で、子どもは様々なことを吸収していくことでしょう。
参考文献:
内田伸子『発達の心理‐ことばの獲得と学び‐』サイエンス社 2017 年
■執筆
細野美幸
■経歴
お茶の水女子大学博士課程修了・博士号取得(人文科学博士)
横浜女子短期大学准教授を経て、現在、鎌倉女子大学短期大学部准教授。
(株)ベネッセ・コーポレーションの委託研究員を兼任。
■著書
「子どもの類推能力の発達」(2009)風間書房
「新時代の保育双書:保育内容ことば」(2017)(株)みらい
「新版:幼児理解」(2018)一芸社
「保育の心理学」(2019)(株)みらい
「子ども家庭支援の心理学」(2019)(株)みらい
[ 【4つの活動で伸びる力】個別]のご感想やコメントをお寄せください。
最近のコメント