まとめ
人生には出会いと別れはつきものですが、信三は早くに生き方を決定付ける転機を迎えました。
幼児期は一生の中では短くとも、人間形成にとって最も大事な時期です。
お父さんや、お母さん、先生のようになりたいと子どもは思ってくれるだろうかと、小泉信三の生い立ちを読んでふと自身を振り返りました。
<小泉信三を読み解くシリーズ>
今回、取り上げる箇所には、慶應義塾の教育理念である福澤諭吉の言葉が出てきます。
詳しく見ていきましょう。
福澤は晩年、「修身要領」という道徳についての教えを著しました。
その中で、こう示しています。
心身の独立を全うし、自らその身を尊重して、人たるの品位をはずかしめざるもの、これを独立自尊の人と言う。
意訳すると次のような内容です。
人頼みにせず、自分の行いに責任を持ち、自らを高めていくこと、個人としての品格を保つことが重要です。
ここでは福澤が残した言葉の中でも特に有名な「独立自尊」という言葉が出てきます。
これは、21世紀の今、日本の教育現場で特に重視されている「主体的な学び」に通じる考え方です。
今、特に重視される能力として、自分で考え、それを世界に向けて発信していくことだと言われます。
この「主体的な学び」を、はるか200年前から重視していたのが、福沢諭吉なのです。
なぜ福澤には200年先を見る先見の明があったのでしょうか。
福澤諭吉が生まれ育ったのは、まだ鎖国をしていた頃の江戸時代です。
そんな中、外国に行って見聞を広めた数少ない日本人が福澤でした。
海外派遣の使節団として、諸外国へ渡航していたのです。
船旅で1か月以上もかかって、アメリカやヨーロッパに行く時代、福澤は計3度も欧米に行っています。
ちなみに、その際に見聞した欧米社会のことを福澤が本にして紹介した著作『西洋事情』は、明治時代の大ベストセラーになりました。
福澤は、当時、すでに国際都市になっていたニューヨークやロンドン、パリなどを回り、個人個人が自分の人生を選択し社会に関わる西洋諸国の仕組に、カルチャーショックを受けています。
そんな福澤だからこそ、国際的な視野に立つことの重要性を強く感じていたのです。
国際人になるには、まず、個人の自立と主体性を持つことだと説いたのです。
福澤に世の中が追いついたわけです。
その一方で福澤は小さな子どもたちが、「独立自尊」という言葉の意味も良く分からず、自分勝手、気ままにふるまえば良いのだと勘違いすることを心配していました。
そこで慶應幼稚舎生に向けて改めて次のような言葉を残しています。
今日子どもたる身の独立自尊はただ父母の教訓に従って進退すべきのみ 幼稚舎生に示す
このように、子どもには親の意見を良く聞いて行動するように、配慮を持った行動をするようにと促しています。
人生には出会いと別れはつきものですが、信三は早くに生き方を決定付ける転機を迎えました。
幼児期は一生の中では短くとも、人間形成にとって最も大事な時期です。
お父さんや、お母さん、先生のようになりたいと子どもは思ってくれるだろうかと、小泉信三の生い立ちを読んでふと自身を振り返りました。
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